ご来光
ほのかに白んでくる雲海の向こうに、小さな光点が生まれてきた。
雲と空の境界線があいまいな橙色となり、それが横に広がった。
赤い点は半球となり、白色に変わりつつ丸に成長する。
ぽっかりと浮かんだ日の光が、厚く淀んだ雲を消していった。
山々の姿を照らしてゆく。
やったぁー。
どこかでバンザイの声がする。
寒さも辛さも忘れた。
頂上には多くの売店がある。
その先のもう少し上には、倒れかかった鳥居が見える。
強風に煽られながらも近づいてみると、朽ちかけた老木は風雪に苛まれ縦に無数のひびを作っていた。
そのひびの間には、無数の硬貨がねじ込まれている。
日本の天空から見下ろす神様は、斜めになりながらも踏ん張って立っているのだ。
深くお礼をして、売店に戻った。
とにかく冷えた体を温めたい。
そんな考えは、誰でも同じだ。
ギュウギュウの店内で、いそいそと味噌ラーメン(当然インスタント)をすすった。
ほっと一息。
やっと、富士山を登りきった実感を覚えた。
